HIDDEN CHAMPION

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Enrico Isamu Ōyama “Black”

ブルックリンを拠点とする大山エンリコイサムの個展『Black』開催

byHidenori Matsuoka

エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモチーフ「クイックターン・ストラクチャ ー」を軸に展開する、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する気鋭のアーティスト大山エンリコイサムが、Takuro Someya Contemporary Art(以下、TSCA)にて、約2年振りとなる個展を開催する。

大山エンリコイサムは、主著『アゲインスト・リテラシー̶ グラフィティ文化論』(LIXIL 出版、2015)や、雑誌『美術手帖』2017年6月号でのエアロゾル・ライティング文化の特集の企画・監修など、グラフィティ文化を、歴史、地域性、手法やスタイルなどだけにとどまらず、身体的な運動や速度、拡張といった様々な角度がら検証、分析する執筆活動も手がけている重要人物でもある。

今回の個展『Black』開催にあたり、TSCAから届いた案内を下記に紹介する。
貴重な作品を直接感じることのできるこの機会を見逃さないで頂きたい。



大山エンリコイサムの絵画は、白と黒を中心としたモノトーンの世界を基調としています。一般的なエアロゾル・ライティングのポップでカラフルな表現とは対照的なこの色彩の欠如は、大山作品にどこか禁欲的で、張りつめた印象を与えるかもしれません。「かたちなら感覚的に判断できる。色だとそれができない。それに色はかたちの運動を相対化してしまう」―作家のこの言葉から伝わるのは、色彩の放棄もしくは白黒への還元が、造形とそこに現象する運動をより強調するために選択されていることです。無彩色であることは、身体の運動から生まれる線を用いつつも、 アクションの「痕跡」ではなく、そのつど鑑者の眼に運動が再生される速度の「表象」を構成しようという大山の実践の根幹と、密接に結びついています。

以上を踏まえると、じつは「白黒」という表現も適切ではありません。「白黒」や「ブラック&ホワイト」という語句は、色彩の放棄という切り詰めによる運動の先鋭化であるものを、「彩度のない色」 つまり無彩色と呼ぶことで、ふたたび色の領域に回収してしまうからです。その結果は、白と黒という二項対立の世界、あるいはラベル化された色の分類の世界です。ゼロが数のない数として数列に組みこまれるように、白黒という概念もまた、色なき色としてみずからを色環に登録します。

本展のタイトル「Black」は、白黒やブラック&ホワイトという二項対立の枠組みを逃れ、規格化された色のパレットを逸脱しながら、黒そのものがもつ潜在力に私たちの注意を促しています。ここで白と黒は、対極するふたつのカラーではなく、白い空間のうちに黒いかたちが広がるように、図と地の関係性に置き換えられるような造形的イディオムとして扱われようとします。「Black」は、人の根源的な表現欲求である「かく」行為と同義であり、生成・運動・速度・拡張といった感覚を直接に想起させるものになる―作家は、タイトルにそうした意図を込めたと述べています。

2011年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、大山は同地を拠点にアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど各地で個展を中心にプロジェクトを行なってきました。 2017年にはアメリカで初の美術館個展「ユビキタス─大山エンリコイサム」(マリアンナ・キストラ ー・ビーチ美術館、カンザス)が開催されたほか、個展「ウィンドウシル」(ルミネゼロ、東京)では 約1週間の会期に 1200名以上が来場して注目を集めます。

本展は、「プレゼント・テンス」展(2016)に続く、弊ギャラリーでの2回目の大山エンリコイサム展です。「ユビキタス」展で初展示された《FFIGURATI #162》《FFIGURATI #163》の2点を含 む大型作品3点および、中小サイズの新作18点を加えた計21点の絵画作品によって構成されていま す。いずれも、日本国内では初の展覧となります。大山作品の画面に束ねられた、かたち・運動・モノトーンの連動する強度を、この機会にお楽しみください。

大山エンリコイサム個展『Black』
2018年11月22日(木)―12月22日(土)

レセプション: 11月22日(木)18時―20時
※作家来場予定

■会場概要
Takuro Someya Contemporary Art|タクロウソメヤコンテンポラリーアート
開廊:火・水・木・土 11:00 ‒ 18:00|金 11:00 ‒ 20:00
休廊:日曜・月曜・祝日
〒140-0002
東京都品川区東品川1-33-10
TERRADA Art Complex 3F

●東京臨海高速鉄道りんかい線 天王洲アイル駅 B出口より徒歩約 8分
●東京モノレール羽田空港線 天王洲アイル駅 南口より徒歩約 10分
●京急本線 新馬場駅 北口より徒歩8分
●品川駅港南口から都営バス(品 91、98)乗車 「天王洲橋」下車 徒歩3分
●目黒駅から都営バス(品 93)乗車 「天王洲橋」下車 徒歩3分

FFIGURATI #162
FFIGURATI #162
2017
Airbrush, acrylic aerosol paint, sumi ink and latex paint on canvas mounted on aluminum stretcher (H)2.44m x (W)1.83m
Photo © Atelier Mole

FFIGURATI #163
FFIGURATI #163
2017
Airbrush, acrylic aerosol paint, sumi ink and latex paint on canvas mounted on aluminum stretcher (H)2.44m x (W)1.83m
Photo © Atelier Mole

Enrico
大山エンリコイサム http://www.enricoisamuoyama.net
アーティスト。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモチーフ「クイックターン・スト ラクチャー」をベースに壁画やペインティングを発表し、現代美術の領域で注目を集める。1983年、イタリア人の父と日本人の母のもと東京に生まれ、同地で育つ。2012年よりニューヨークを拠点に世界各地で個展を行なうほか、著書『アゲインスト・リテラシー─ グラフィティ文化論』の刊行、雑誌『美術手帖』エアロゾル・ライティング特集の企画・監修、コム デ ギャルソンやシュウ ウエムラとコラボレーションするなど、多角的に活動する。2017年に個展「ユビキタス─ 大山エンリコイサム」がマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(米カンザス)で開催。