HIDDEN CHAMPION

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Shing02 SPECIAL RELEASE EVENT

令和初日、Shing02、SPIN MASTER A-1、Sauce81を交えての特別なトークショー

令和元年初日となった2019年5月1日午前0時。ポツポツと冷たい雨が降る外とは対称的に、“CIRCUS TOKYO”内は3人のアーティストの熱く情熱的なエネルギーに包まれていた。自身の半生以上をアメリカで暮らし、ひとりの日本人アーティストとして海外での活動を続ける事で日本のHIP HOPシーンをよりグローバルに押し広げている「Shing02」。去年12月に、彼の最新英語詞アルバム『S8102』を共同で制作した「Sauce81」。そして約10年ぶりの日本語詞アルバム『246911(ニシムクサムライ)』のプロデュースを手掛けた「SPIN MASTER A-1」。元号が変わる大きな節目にこの特別な3人が集まりアルバムリリースのお祝いも兼ねた初めてのトークショーが行われた。その後には、宇宙空間を漂っているかのような心地よい空間を演出した「Sauce81」のパフォーマンス、キレがあり疾走感溢れる「Shing02」のラップと和テイストのスパイスが効いた「SPIN MASTER A-1」の絶妙なビートがうまくマッチしたライブも披露され、オーディエンスとアーティストが繋がった最高のグルーヴであった。今回は、新時代の幕開けとなった極上の初夜の模様を、画像とトークショーの内容をお届けする。

Photo: Yuta Sasaki
Text: Ryosei Homma

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——去年の12月にリリースしたアルバム『S8102』、そして今年1月に立て続けにリリースされた『246911』ですがそれぞれのアルバムへの思いなどお聞かせください。

Shing02 僕らはインディレーベルで活動しているのでリリーススケジュールは無いんですが、結果的に今回は英語のプロジェクトと日本語のプロジェクトを立て続けに制作してデジタルとしてパッとリリースすることができました。実際フリーだったら売る必要もないんですが、一応アルバムなのでフィードバックをすぐに得ることができたっていうのは今回のアルバムの共通点ですね。

Sauce81 僕とシンゴ君で作った『S8102』の方は、2人ともSから始まる数字の名前という共通点からそれを組み合わせてアルバムタイトルにしたんですけど、すごく大きな数字なんで未来とかを想起させるような数字だなと思って2人で“宇宙をテーマにアルバムを制作したい”という話になって、僕がトラックを作ってシンゴ君がラップを乗っけてくれました。

SPIN MASTER A-1 自分はもともと日本の古い楽器のサンプルを使ってビートを作っていたんです。何かリリースするタイミングをずっと探っていて、それをシンゴも知ってくれていて、2018年12月の中旬ぐらいに日本語でアルバムを出そうという話になったんです。1ヶ月の間にラスベガスとハワイのスタジオを行き来する機会が2回ぐらいあったので、そのタイミングで色々詰めてできたのが『246911』です。

——『S8102』が出て約2週間後に『246911』がリリースされましたが、なぜそんなショートスパンでアルバムを発表したんですか?

Shing02 実は僕とA-1君で「有事通信」という壮大な企画をかれこれ7~8年ほどやってたんですが、それが一時停止になっていて。そんな中HIP HOPのシンプルなリズムでオーソドックスに本当に好きなことを歌う、自由な感じのブーンバップをやりたいっていう事になって。とりあえず1曲ずつでも出してみようかなっていうところからアルバムに膨れ上がっていったんです。
実際はソース君の時もそうだったんですが、アルバムの作り出しは宇宙の旅っぽくファンキーにいこうって構想していても、いざ詞を描き始めたらもうちょっと内面的なことを書きたくなったり、もうちょっとストーリー性を豊かにしていこうといった想像がどんどん膨れ上がっていくんですよね。そうすると自分の中でも勢いがついてくるというか、自分の中でもこれは面白いんじゃないかってノってくるんです。そんなこんなで結果的には、かなり集中的に詰め込んで出したエネルギーっていうのは両方の作品にあると思うし、どっちがいいか悪いかは言えないんですけど2年かけようが2日かけようが。個人的にHIP HOPって瞬発力が全てだと思っているので、寝かせていい意味で発酵するときもあれば、やはり寝かせて腐っちゃうときもあるし。本当にいいメンツが揃えば一日中スタジオに入って収録するのもアリだと思うし、そこを信じてやった結果ですね。

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——みなさん海外を視野に入れた楽曲制作を続けていらっしゃいますが、英語と日本語を切り替えるタイミングだったりビート制作のアウトプットはどのように選んでいるのですか?

Shing02 その質問は一番聞かれるんですよ。自分の中で日本語か英語かっていう選択はビートにもよるし、相手のリクエストにもよったりとTPOに合わせます。米かパンかっていう話なんですよね。だから、和食で統一するんだったらもちろん日本語でやります。自分は一曲の中で日本語と英語を混ぜるのが好きではないので、日本語でやるんだったら徹底して日本語でやろうって思います。これが自分のスタイルなので意地でやってるっていうのもあるんですけどね。日本語は日本語の美しさや響きを大切にしたいし、英語は英語だけでやりたいって考えているので、今回は結果的にアルバムごとに分けてみました。でも、それは俺の中ではソース君が鍵盤かな、ベースかなっていうチョイスと変わらないと思うんですよね。A-1君だって今まで和物以外もたくさん作って今こういうフェイズにいるのかもしれないし。

Sauce81 僕の場合は歌も歌うんですけど、音を作るのが好きなので必ずしも自分で歌わなくてもいいっていう考えもあるし、表現方法の中で相手にどう伝えたいのかっていうことでパレットの色を選んでいるような感覚です。『S8102』では、海外の人にも聞いてもらいたいっていう意味でも英語でやりたいって言っていたんですが、逆にA-1君のサウンドが日本的で海外の方達に認知してもらえるのかなって思っているので面白い時代だなと思います。

Shing02 日本人が海外のラップを臆せず聞いているのと一緒で、海外の方も日本のHIP HOPが聞きたいっていう単純なことだと思うんですよね。日本語には英語の訳を付けた方が映画の字幕と一緒で分かりやすい、そういう風なアプローチは大事なんじゃないかなと思うので自分達から積極的に行動しています。

SPIN MASTER A-1 僕の場合はシンゴともよく海外でライブをするんですが、その時の出会いの中で、どこから来たのかっていうことを言葉で説明するよりも音で理解してもらう方が早い場合も多いので、“日本から来ているんだ”っていうのを自身の活動の根本に持ちつつ、音楽活動を続けています。
和楽器と聞くと一般的には古臭いイメージもあると思うんですが、そんな和楽器で奏でられた音楽と出会い実際に演奏することによって自分が先に進めたり、新たな出会いがあったりするんですよ。例えば、バンドでのアメリカツアー中に僕らの機材を見てどんな音楽をやってるのってUBERのドライバーからよく聞かるんです。それで、「HIP HOPだ」って言ったらみんな一瞬固まるんですよ。このアジアンは何を言ってんだって。でも、そんな時にすぐに聞かせれるパンチのある曲を持っときたいなという想いがあったり、流れが色々重なって和楽器を取り入れるようになったんです。自分のHIP HOPで培ったスキルをトラディショナルなサウンドに乗せた時にどう変化して行くか、まだ実験の段階なんですが、勉強も含めそういうことにチャレンジしていきたいです。
僕の場合、日本語の楽器を使っているフェイズっていう言い方も正しいですし、自分が古い楽器で構成されたここのラインがかっこいいって感じるとこを50年後、100年後にHIP HOPが生きているかは分かりませんが、新しいジャンルの中でも僕が見つけたときに感じたフィーリングと同じように、過去の作品のかっこよさやエッジを理解してアップデートして欲しいんですよね。100年後の若者、国内外問わず誰が何の音楽をやっているかわかんないけど“A-1ってやつが作った曲かっこいいな”って思ってもらえるよう、今はそこにフォーカスしたいと思っています。

Shing02 『246911』ではA-1君がビートを担当していわゆる和風なものを作ったんですけど、実際ネタ自体はそこまで真新しい訳ではないし例えば感覚として琴をサンプルしてビートに乗せるっていう先人たちがやってきたようにオーソドックスな手法で曲を作っている訳です。だから、そこ自体は全く違う事をやっているっていう訳ではなく、“敢えて今までなされている事だけどもっと突き詰めよう”っていう、そこなんですよ。手法はオーソドックスでもいかにそれをアップデート出来るかっていう意外にマニアックな遊びだと思うんですよねHIP HOPっていうのは。
昔のことを熟知していないとそこに何かをプラスするっていうのは勇気がいると思うんです。テクノロジーも何でもそうなんですが、ソース君だってファンクをアップデートしてたり、HIP HOPをアップデートしてたりいろんなことにチャレンジしていると、そのヒストリーを知らなければアップデートするってなかなか難しいじゃないですか。やっぱそこにはリスペクトがあって自分の通ってきた道っていうのが、それこそA-1君の言っていた音っていうのが素直に出ないと流れに足すっていう事にはならないと思うんですよね。自分の中でもたまたまこういうことをやってきてこういう道を通っていますっていうストレートな表現であっても最終的には何かを足している、貢献しているっていう風にはなると思うんですよね。そういう気持ちでやってるんで、わざわざ違うことをしているって訳でもないんですよ。実際やってることはベタなんです。サンプルチョップしてビートに乗せてラップで歌っているっていうごくシンプルなことだと思いますね。でもやっぱその中で突き詰めたいことが出てきたりとか、HIP HOPって結構マニアックな遊びなんですよ。

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——表現であったり、時代のニーズに合わせなければいけないなど自分のやりたいことができなかったりする多くのアーティストが苦悩している中で、皆さんはそれぞれどんな個性やスキルを大切にしていますか?

SPIN MASTER A-1 やっぱり、自分らしさっていうのを自身で理解できるまでいろんなチャレンジをします。そして、自分の個性っていう意味では失敗してから初めてくっきりしてくると思うんですよね。僕は基本的にDJカルチャーも含めたHIP HOPという手法に則って、自分と向き合ってきたつもりです。その中で人のリアクションから学ぶこともあったり、技術の進化で学ぶこともあったり、表現、らしさ、個性っていうのはだんだん磨かれていくものだと実感しているので作品にはA-1らしさが残ると思うんですよ。例えば僕自身をフォントで言うなれば、同じフォントだけどカラーが違うとか表現の仕方が武器として増えてくると思うんですよね。

Sauce81 質問の意図とあってるかわからないですが、2011年の震災の時に電気が使えなくなったら自分を含む“打ち込みをやっているミュージシャンは何もできないな”と感じてしまって。そういった音楽が好きでこれまで突き詰めてきたのでこれからもやり続けようとは思うんですが、でもそれ以降に楽器を実際に演奏することにもうちょっと向き合いたいなと思いまして。ピアノも高度な楽器なのでいきなり何もなくなってしまったところからいきなり出来る楽器ではないと思うんですけれど、自分からピアノを少し弾いてみたり、そんな思いを心に持ち最近は制作と向き合っています。

Shing02 ぶっちゃけトークをすると、自分個人のアイデンティティとアーティストっていう間には個人的にすごくバッファがあるんですよ。その距離感を保っているんです。自分とShing02にはすごく距離があって、人にやらせたら面白いんじゃないかってことを実験的に自身で挑戦し続けているつもりなんです。だからそれぞれのアーティストのバッファのある作品がいいと言われようが悪いと言われようがあまり気にならないタイプで、もちろん自分でまずいもの出したなっていう心残りがあればまた違うんでしょうけど、その都度その都度自分たちはインディーズでやってるし、誰の指図も受けずに活動しているので。そこには自負もあるんですが人に指図されるのが嫌でやってることもあるかもしれないし、いろんなバッファがある中でその時に自分が好きなことを出し切れば次に進めるだろうっていうその繰り返しなんですよね。
さっき言った手法であったり、ファッションで言えばシャツ自体を発明し直すのは難しいかもしれないけれど、その時その時のこだわりがあってそれを消化していくっていうのが大事なんじゃないかなっていうそれに尽きますね。

——皆さんそれぞれのアルバムのタイトルなど個性的なものが多いと感じます。どういう風に決めているんですか?

Sauce81 僕は歌も歌うけどインストの曲が多くて、インストってタイトルつけるのがすごい難しいんですよ。歌詞がないから。歌詞があったら内容だったりフックにくる部分がタイトルになったりすると思うんですけど、夜っぽい曲って言ったら全部なんとかナイトとかになっちゃうから(笑)。タイトルは後から来る場合が多いんですが、アルバムになるとコンセプトを持って制作する場合が多いので、漠然としたイメージの中でいい言葉はないかって考えながらいっぱい曲を作って、これはタイトル曲になりそうだなって曲のタイトルがそのままアルバムのタイトルになる事もあるし。アルバム全体のコンセプトを考えながら曲を作りながら考えますね。

SPIN MASTER A-1 僕の場合、インストから先に作って直感でタイトルを決めるんですよ。今まではセーブする時にタイトルを日付にしてセーブしていたんですが、全部日付にしてしまうとどれにどんな特徴があったか忘れちゃうんですよ。だから直感でこれは行き当たりばったりやから“行き当たりばったり”とか、とりあえず仮なんですが。でもラッパーがリリックを乗せてくれたらミラクルが起きて新しいものが生まれる時もあるんです。基本は直感で決めていますね。

Shing02 今回、両者とアルバムを作ったんですがラフでくるインストの題名っていうのを僕はインスピレーションの源としてすごく大事にしているんです。やっぱり、プロデューサーの音っていうのはすごくリスペクトしたいので、仮タイトルでもそのイメージっていうのは助けになるんですよね。別に無理やりやっているわけではないけど、例えば何食べたいっていうのと一緒でキーワードが1個あるだけで、じゃあこういうの作ろうかってなるんですよ。だから、『246911』は半分ぐらいA-1君のデモのタイトルがそのまま曲名に、ましてはストーリーにまで発展しているし、それって本当にインスピレーションだからスタート地点としてすごく大事なんですよね。

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——最後に、作品に込める思いであったりブレない信念など、作品を作る時に心がけていることを教えてください。

SPIN MASTER A-1 僕はDJということもあって、自分がビートをかけた時にどういうリアクションが来るかなみたいなこともイメージしつつ、ラップを乗せた時にどれだけダークに聞こえるかとか、どれだけ人の気持ちを惹きつけられるかとかそういったことも考えつつ、愛着が湧いてくるような作品を自分自身で引き続き作っていきたいなと思います。

Shing02 ブレないとおっしゃいましたが、それは自分からしたら見えないというかわからない部分なんです。逆に言葉の綾で自分は“群れない”っていうことの方が大事だと思うんですよね。あんまり群れていると人とつるむことにばかりにエネルギーを使い過ぎて、自分が無くなってしまうと思うんですよ。だから、“HIP HOPは部活動ではなく武士道に近い孤独なもの”だと思っています。創作活動っていうのは孤独でなければいけないと思いますし、僕が共感するアーティストは自分を突き詰めて人間としても魅力がある人達ばかりなので。オリジネーターっていうのはそれなりに初めは模倣もあったかもしれないけれど、孤独な道を突き進んでいった方達ばかりだと思うので、そういう精神は大事だと思います。自分の中でこれは前にやったから絶対やらないとか、いろんなポリシーが無いと毎回同じことの繰り返しで、マンネリ化してしまうから。

Sauce81 いろんな音楽が好きなのでその時々でやりたいことも変わっていくんですが、同じことの繰り返しにはしたくないので自分がやっていないことに常にチャレンジしています。これは尊敬するアーティストが言っていたんですが、“次に出すアルバムがベストだ”っていう気持ちで毎回アップデートしていきたいと思いながらやっています。

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