Issue #75
Winter 2024 - 2025
HIDDEN CHAMPION x SORTone presents HIDDEN WALL #16
Interview: Ryosei Homma
2000年代初頭からグラフィティライターとして活動を始めたZECS。彼が描く、ポップだがどこかやんちゃでウブな雰囲気を纏うキャラクター『YUMYUM』は路上からキャンバス、ポスターからプロダクトにまで縦横無尽に駆け回る。そんな様々な分野で活動するZECSを招き、原宿の「SORTone」にて2025年2月8日(土)から2月16日(日)まで個展を開催する。ここでは、ZECSが今回のHIDDEN WALL™のために描いてくれた壁画作品と共に、個展について話してくれたインタビューを紹介したい。
―まず、グラフィティと出会い、活動を始めたきっかけはなんですか?
幼い頃から絵を描くのが好きで、図工と美術しか得意科目はありませんでした。グラフィティを認識し始めたのは中学の時にHIP HOPを聴くようになり、CDのジャケットやロゴ、雑誌などでグラフィティが載ってるページを見かけるようになってからですね。それに触発されて、10代の頃は近所のトンネルや壁に、昼間から適当な缶で全然描き方もタグネームを描く事すら知らずに描いたりしていたら案の定追っかけられたりして(笑)。最初の頃はそんなグラフィティとも言えない適当な落書きでしたね。
―現在は愛知を拠点に活動されていますが、東京を拠点に活動されていた時期もありますよね。
東京に住んでいた時期もあります。現在、名古屋にある「MADBOXXX」というショップは、元々高円寺にあった「MADBOXXX」から名前を受け継いでいるんです。そこの店主は名古屋の先輩だったのでよく入り浸っていて、東京のバンドの方々や色んな人を紹介して貰ったり、飲んだり遊んだり、東京に住んでいた頃に様々な人と繋がることができました。今仕事ができているのは、多くの方にいろいろな人と繋げて貰ってできていることなので感謝しています。
―では、最初にギャラリーで展示をやろうと思ったきっかけはなんでしたか?
そもそもは名古屋の友人が高円寺で展示をやるときに「時間あったら飯でもどう?」って連絡がきて、その流れで会場の高円寺の「FAITH」というギャラリーに足を運んだのが始まりです。展示スペースのサイズ感やギャラリーの雰囲気から、ここなら俺も何かやりたいかもと思ったんです。基本的にそんなに自分から事を始める事は無いんですが、ちょうどその頃からオリジナルのソフビを作り出し始めてたのもあったり、心のどこかであと数年で東京から離れるつもりだったので、「東京にいる間に何かやったろ!」って言う気持ちになったのがきっかけですね。それが2018年で、最初で最後という思いで展示した初の個展でした。
―結果的にその後も展示を続けているのは楽しかったということですよね。ギャラリーワークと外の活動の違いはなにか感じますか?
ギャラリーでの展示は自分の内面を他者に向けていて、外での活動は自分自身が楽しむ感じですね。
―好きな絵描き、影響を受けた作家やライターはいますか?
影響を受けたのはグラフィティ以前に地元名古屋の若野桂さんが強いと思います。好きな画家はPeter Saul(ピーター・サウル)、五木田智央さん。好きなグラフィティライターは国内外沢山いるんすけどギャラリーワークも含めるとREASことTodd James(トッド・ジェームス)が好きです。そして90年代〜の神奈川、東京、大阪のライターにはきっかけと尊敬です。
―今回の展示“Pocket Jammed with memory lane”はどんな展示にしたいですか?
これまで展示のタイトルは個展の場合は“〜Exhibition”と付ける感じでした。それはイラストレーター的な感覚があって、絵に特に深い意味合いなどを持たせてない部分があるからです。ただ、今回タイトルを付けてみた事に関しては、自分の絵は素直に記憶や思い出しかないと思ったからなんです。普段自分の描く絵は、キャラクター達に、自分が見たものや好きなものを投影させた作品なんですよね。それは実体験だったり、持っていたウォークマンや買い替えたあのブーツ、今みたいにYouTubeなんか無くかった当時、レコ屋がダビングして作ったブートのVHSで覚えている場面、憧れた車、レコードの裏ジャケやインナースリーブに映っているラッパーの取り巻き達などなど…。大好きなHIPHOPカルチャーからの影響が強い物が多いです。深い意味は無いけど素直に記憶や思い出しかないんすよね〜。地球上からしたら凄く小さくポケットに入る位の思い出だけど、それをパッケージングしたのが自分の作品であり、そんなポケットは膨らみ続けてるという事で、今回は映画『Menace II Society』の邦題の『ポケットいっぱいの涙』から引用して『ポケットいっぱいの思い出』をHIPHOP好きで英語が堪能な友人に相談し色々と案をだして頂き、『Pocket Jammed』に決めました。「with memory lane」は説明的でもあるけど、memory laneという言葉を使いたかった部分もありますね(笑)。