
“TORI MODOSHITAI”
NAZE Solo Exhibition
NAZEがLAでの個展を経て、
ギャラリー「月極」での個展を実施
グラフィティカルチャーをルーツに、廃材や日用品など身の回りのあらゆる「もの」を創造の根源に据えるアーティスト、NAZE。彼が初の海外ソロ個展をアメリカ・ロサンゼルスで開催した。クリエイティブカンパニー『CEKAI』のLAにあるスペースで、「しまむら」のTシャツやお菓子のパッケージといった日本的なモチーフを用いて即興的に制作に挑んだ本展。この経験を通じて、彼は「売れること」への意識から解放され、「もの作りが大好き」という純粋な原点を再確認したようだ。
── 今回はLAでの展示でしたが、海外で展示したのは初めてですか?
以前、ベトナムの美術館で現地の若いライターたちと一緒に展示したことはありますが、海外でのソロ展示は今回のLAが初めてです。この展示は、クリエイティブカンパニーの『CEKAI』が持つスペースで行いました。もともと、CEKAIは京都にも拠点があって、僕が京都に住んでいた頃に仲良い友達がそこに入っていたんです。そこから少しずつ関係が生まれ、本格的に関わり始めたのは、椿昇さんが中心となって開催している「ARTISTS’ FAIR KYOTO」がきっかけです。僕はCEKAI代表の井口皓太さんから推薦していただいて、そのアートフェアに参加することになりました。その際、作品の販売やお客さんとのやり取りが苦手とよく相談していて、2020年ぐらいからCEKAIにマネージメントをしてもらう様になりました。
──そういった関係性の中で今回の展示が実現したんですね。
CEKAIの井口さんや哲丸さんたちとご飯してるときに、「海外の展示に興味ないの?」と聞かれて。「めちゃくちゃやりたいです!」と答えたら、「LAにCEKAIの新しいオフィスができたから、そこでやってみないか?」って提案されたんですよね。ガレージスペースもあって面白そうだったんで「ぜひやりたいです!」と即答しました。そこから1年経たないくらいでこの展示が実現しました。LAのスペースはまだ新しくて日本のアーティストがまだ展示したことがなく、僕は即興的に作品を作れるタイプな事もあり一番最初にやるのにいいんじゃないかと思ってくれたようでした。ちなみに哲丸さんは半蔵門にあったANAGRA ギャラリーで出会ってから、今まで色んなアドバイスしてくれたり、一緒に何かを作ったり出来る、面白アイディア兄貴です。今のアトリエ、ムライムラを紹介してくれたのも哲丸さんなんです。
──個展のコンセプトや実際に現地に行かれた感想はどうでしたか?
LAは空気感が最高でした。暑いけどカラッとしていて、風が気持ちく自分的に制作するにはピッタリの気候だなと。哲丸さんと一緒に渡米したんですが、展示が始まるまでの1週間は毎日夜中までひたすら制作していましたね。オフィスの一室に泊まり込んで、哲丸さんはギャラリースペースで寝てくれました。感謝です。哲丸さんは個展のディレクションに入ってくれて、「日本から来た変なヤツが、日本のモノで何か作ってるぞ」みたいな見せた方が現地の方には分かりやすくて楽しんでもらえるんじゃないかというアイデアが出たんです。そこで、日本人にとっては当たり前のもの、例えば「しまむら」で買ったTシャツをカスタムしたり、子供の頃に食べていたお菓子のパッケージや、拾った空き缶を使ったりして、僕が普段やっていることと日本っぽさを混ぜ込んだ作品を作っていきました。
──写真を見ていると、DJが入って賑わっている模様や、シルクスクリーンを使ってプリントしている様子が伺えますね。
今回の写真は、東京で活動するフォトグラファーの中沢功一さんが撮ってくれたんです。中沢さんは、この展示に合わせて日本から応援に来てくれて写真を撮ってくれました。他にも、半蔵門でMATTERをやっていて今はロンドンにいる酒井建治、同じアトリエの菊池虎十という作家や、そして妻のあやちゃんが現地に来てくれました。この展示の会期は3日間でしたが、DJを入れたパーティをしたり、シルクスクリーンの機械を借りて来てくれた人にシルクを刷ってあげたりしました。
──現地の方の反響はいかがでしたか?
反応は二つに分かれましたね。僕の昔ながらのスタイルのドローイングを「良い」と言ってくれる人と、今回作った「日本っぽさ」を前面に出した作品を「クールだ!」と言ってくれる人と。セル画の作品や日本の潰れた空き缶を使った作品が特にウケが良かったです。実際に現地の人と作品の話をして日本との空気の違いを感じれたのも今回の展示をして良かったなと改めて実感してます。セル画の作品は評判が良いんですが、僕の天邪鬼な性格が出て作るのをやめちゃったんです。「これ、売れるよね」って自分で納得すると、もういいかなって…。本当に面倒くさい性格だなと思います。
──ご自身をそのように分析されているんですね。
最近、人にどう思われているか考えすぎたり、嫌われたくないと思ったり。若い頃は「俺が世界の中心だ」くらいの気持ちだったんですけどね。今はみんなが平和でいてほしいという気持ちもありつつ、昔の気持ちを取り戻したい気持ちが混ざりあって葛藤しています…。
──平和、という言葉が出ましたが、海外での経験を通じて何か感じることはありましたか?
以前ベトナムに行ったとき、現地の若いライターたちと話す機会があったんです。彼ら曰く、ベトナムでは最近まで戦争があったから、グラフィティのようなカルチャーを楽しむ余裕が全くなかった、と。その話を聞いて、自分がどれだけ戦争から遠い場所にいて、カルチャーを楽しめることがどれだけ平和なことなのかを改めて実感しました。自己表現がどうとか、何がおしゃれかなんて、生きるか死ぬかの状況ではどうでもいいことですよね。
──確かにそうですね。
縄文時代は1万年も戦争がなかったっていうじゃないですか。土地の奪い合いとか、お金みたいな概念が争いを生んでいるのかな、とか考えちゃいますね。昔は知識や優しさ、思いやりといった精神的なものが「富」だったはずなのに、いつからかそれがお金に変わってしまったのが、原因の一つな気がします。
──そうした考えは制作にも影響を与えていますか?
最近、生きていくためには「売れる」ことを意識しないといけないのかな、なんて思ったりもしたんですが、今回の展示を経てどっちも意識しながら、自分が本当に作りたいものを作ることが、結果的に自分の生活を豊かにしてくれるんだって気づきました。だから次の「月極」での個展『TORI MODOSHITAI』はめちゃくちゃ気合を入れています!
──アートに対する考え方で、昔と変わった点はありますか?
根本にある「もの作りが大好き」という気持ちは全く変わらないですね。ゴミを拾うのも、陶芸も、壁画も、お店作りも、僕にとっては全部同じ「もの作り」なんです。変わったことで言うと、拾うゴミの量が減りました。笑。特に粗大ゴミや謎のパーツ、結婚して自分だけの家じゃなくなったので、家に持ち帰りにくくなりました。もし自分だけの広い部屋や倉庫のようなアトリエできたら、また容赦なく拾い始めると思います。
──今は少しゴミを拾うことを制限されている状態なんですね。
そうですね。だから、アーティスト・イン・レジデンスみたいな、どこかに滞在して制作するスタイルは、今の自分に合っていると思います。今回のLAもそれに近くて、現地のガレージの周りで廃材を拾ってきて小屋を作ったり、今までやってきたことが活かせたかなと感じています。

“TORI MODOSHITAI”
NAZE Solo Exhibition
会場:月極
住所:東京都目黒区中央町1丁目3−2
会期:2025年9月20日(土) – 10月13日(月)
※月曜日休廊(10月13日のみオープン)
月〜土:14:00-20:00、日曜日:13:00-19:00
*Opening Reception:9月20日(土) 18:00 – 23:00
@tsukigime.space
@naze.989
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