
Interview with
Ryoya Nakazato
シルクスクリーンによる一点モノの表現とDIY精神。
中里凌也インタビュー。
大型のシルクスクリーンやライトボックスを自作するなど、独自のビジュアル表現をハンドメイドで追求している中里凌也。アートワークとしての一点モノと、クライアントワークによる大量生産を、自身の創作欲のバランスをとるかのように行き来しながら活動を行っている彼に、ここに至る経緯や影響、気になる今後の展望を聞いた。
- Interview:
- Toshihito Hiroshima

───ではまず始めに自己紹介をお願いします。
高校生だった2014年頃から〈IMPUDENT LIFE(インピューデントライフ)〉というブランドをやっています。シルクスクリーンを使い始めたのと同じタイミングでブランドを始めたので、その技法を使って遊んでいる感覚でブランドのデザインやモノづくりをしています。
───シルクスクリーンを始めたきっかけを教えてください。
僕は裏原カルチャーから洋服が好きになったのですが、高校1年生の時に〈WTAPS〉の西山徹さんの『MY LIFE IS THIS LIFE』という本を読んだことがシルクを使うようになった1番のきっかけです。友達たちと「裏原って知っているけど深く知らないよね」って話になり、ある友達がその本を持ってきてくれてみんなで見たんです。その本はいくつかのセクションに分かれているのですが、その中の一つにシルクスクリーンのセクションがありました。それを見てシルクスクリーンを使えば洋服を自分で作れることがわかり、すぐにやってみたら面白かったんです。そしてブランドも始めました。

───シルクスクリーン以外はどのようなことに興味がありましたか?
中学生の頃はスケボーをやっていました。ちなみにスケボーを始める前は、メンズエッグとかにも出ていたくらいのギャル男でしたね。14歳くらいから一人で渋谷に行っていて、雑誌のスナップ写真を撮られたりするくらい見た目も派手でした。当時はそういったモデルみたいなことをやってみたいと思っていたんですが、だんだんと自分は裏方に回ってモノを作る方が好きなんだと気がついていきました。
───高校卒業後はモノ作りについて専門的な分野で学びましたか?
文化学園大学に通ってファッションについて様々なことを全般的に学びましたね。でも授業以外の方が濃かったです。学校のみんなと会って話して、飲みに行ってクラブ行って。そのまま朝になるとみんなでまた学校に行くみたいな、そんな生活を週4くらいでしていましたね。その経験によって今があると思っています。色々な友達と出会いましたし、それが今の仕事につながっていると思います。

───中里さんにとって、シルクスクリーンの魅力とは何ですか?
プリントの質感が好きなんです。シルクスクリーンはもともと和服を作るときの捺染技術がルーツにあるそうです。元々は本物のシルクでやっていたからシルクスクリーンという名前で、一点物を作るための方法でした。本来は大量生産用ではなかったんですよ。そこからイギリスで特許が取られて、大量生産用に使い始めるようになりました。だからシルクスクリーンが好きな理由を考えると、単純に日本人だから日本にルーツがあるものをやりたいという思いがあるんだと感じますね。
───大型のシルクスクリーンの版や、露光するライトボックスも自作していますよね?
DIYで道具を作るのは、人が面倒くさいと思うものにこそ穴があると感じているからです。大型の版やライトボックスを作るのはかなり手間が掛かるからみんなやらないじゃないですか。そこが面白いと感じるんです。元々は友達のアーティストの作品のために作ったのがきっかけですが、その時にこれなら自分で作れると思ったんです。

───好きな作家や、影響を受けた友達などはいますか?
好きな作家はたくさんいますね。ゲルハルト・リヒターと横尾忠則が好きですね。友人のヤビク・エンリケ・ユウジは同世代で好きなアーティストの一人です。ただ僕はあまり「この人」っていうのがなくて、音楽も服も様々なものが好きですね。好きなものが幅広いというか。
───様々なものから影響を受けているのですね。それは中里さんが作る洋服にもつながっているような気がします。
僕自身がそういう人間で、様々な人やものから影響を受けているんですよね。例えば、人の性格とか人の良いところを取り入れて自分で試してみたりとか。このデザインがかっこいいから、他のものと組み合わせたらさらにかっこよくなりそうみたいに、良いところを組み合わせることをやっているような気がします。


───洋服のデザインをするときのモチーフはどのように選んでいますか?
普段は自分が好きなものを、バックグラウンドなど関係なく選んでいます。かっこいいものって純粋にかっこいいので、自分の美的センスの中でのかっこよさを追求しています。それが服とどれだけマッチするのかバランスを調整しています。かっこよければ後々から認知されていくと思うので、まずかっこいいかどうか、それが僕の中では大事な基準です。
───中里さんの活動では古着の上からデザインを乗せ、リメイクするということをやっていましたよね。
それは環境の観点から、自分で在庫を持つリスクを減らしたいと思った時に考案しました。人が持っている服にプリントをすれば、その人が着ていなかった服を新しくできるじゃないですか。相手がどんな服を持ってくるかは僕は意図できないので、持ってきた服に実験的にプリントしてみたら面白いと思って始めたんです。今まで着ていたアイテムが新しくなって喜ばれるという反応があって嬉しかったです。その活動に興味を持ってくれた〈agnes b.〉からオファーがあり、巾着バッグにその場でシルクスクリーンでプリントをするイベントも行いました。

───大量生産ではなく一点モノにこだわりがあるのでしょうか?
僕は一点モノもやるし、企業から依頼された大量生産の仕事もやります。なので、一点モノだけにこだわりがあるわけではないですね。僕の活動はアーティストでもないしファクトリーでもない。ジャンルに属したくないというか、分類されたくないんですよね。僕自身もどうなるか分からないみたいなことがしたいと思っています。
───今後何か挑戦してみたいことはありますか?
〈IMPUDENT LIFE〉を始めて10年になるのですが、今の自分にはちょっとポップすぎる感じがしてきたので、新たなブランドを立ち上げることも考えています。あとは、今年になってプリント会社を設立しました。なのでこれからたくさんのプリントができれば良いなと思います。

“Last-Last Dance”
at:offshore

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