
Interview with
HIROTTON
現実と幻想の間に浮かぶ、HIROTTONの世界
パンクやスケートボードのカルチャーを背景に、ドクロや動物、自然や社会的テーマを独自のフィルターを通して描き続けてきたアーティスト、HIROTTON。
ロンドンでの活動を経て日本に拠点を戻し、VANSやPUMA、ELEMENTなど数々のブランドへのアートワーク提供や、自身のアパレルプロジェクト「PARADOX」の展開など、その活動は常にDIY精神に根ざしながら広がってきた。
2022年には、HIDDEN CHAMPIONから活動歴10年の軌跡をまとめたアートブック『PARADOX』を発表。その後も国内外での個展を積み重ねてきた彼が、満を持して「HIDDEN WALL」プロジェクトに参加する。
幻想的なスカルやアニマル、現実と非現実のあわいを漂う世界観。彼が探り続けてきた「境界線の向こう側」が、今回のエキシビションでどのように描かれるのか。
改めてDIY精神と共に歩むHIROTTONのパーソナリティに迫る。
- Interview_
- Hidenori Matsuoka
- All Artworks_
- ©︎HIROTTON

──今日はどんな感じで制作してましたか?
HIDDEN WALL用の壁画を描き終えたので、今日はこのスペース(SORTone)で新しいキャンバスを1日ペイントしていました。普段は家で作業しているんですけど、ここは広くていいですね。すごく集中できます。
──今日の服装について教えてください。
Tシャツは自分のブランド〈PARADOX〉のもの。パンツは〈Cookman(クックマン)〉っていうシェフパンツブランドのものを履いてます。提供してもらっているんですが、動きやすいし作業着としても調子いいので、スケートもペイントもこれでやってます。靴はVANSですね。一回履き始めると同じ靴を履き続けて、半年くらいで潰れるまで履きます。


──毎日同じ靴ですか? コーディネートはあまり気にしない?
基本的に気にしないですね。黄色い靴のときもあるけど、そのときも半年とか毎日黄色い靴を潰れるまで履き続けます。Tシャツも自分のや仲間のものばかりだし、スタイルはあまり変わらないです。髪は短くしてからずっとこのまま。夏は汗をかくのでバンダナを巻いてます。時計もここ10年くらいG-SHOCKを手首の内側に向けて付けています。外側だとスケボーで転んだときに手首を痛めるから。なくしてもまた同じのを付け直してます。
──普段の1日の流れを教えて。
だいたい朝8時に起きて、夜は0時くらいに寝ます。午前中はジムに行ったり、オンラインストアの発送をしたり。昼飯を作って食べたら絵を描き始めます。夕方から夜まで描いて、夜ご飯を食べてからまた描くこともある。平日はそうやってひたすら描いて、土日はスケートしたり仲間と飲みに行ったり。メリハリをつけないと続かないので、あえてルーティーンを守ってます。


──最近楽しかったことは?
キャンプですね。夏に毎年行っていて、千葉の館山の方に行ったりします。釣りをして食べたり、酒を飲んだり。そんな感じです。普段は家がスタジオになってるので家にいる時間が多いんですが、やはり家も落ち着きますね。あとは仲間とスケートしてるときも楽しい。だいたいいつも4~5人で滑ってます。
──子供の頃の思い出は?
父の影響が大きいですね。DIYが好きな人だったんです。小学校のときの自由課題の絵を描くときも「もっと細かく描け」とか「最後までやりきれ」って口を出してきました。正直うるさいなと思うこともあったけど、そのときに「細かく描ききるのも面白いな」って気づけたんです。うまく描けなくて悔しかったけど、父に言われて最後までやったら、思った以上にいい絵になった。あの体験は、今でも作品を描くときに残ってます。今年父が亡くなったんですけど、改めて父に宛てた手紙を書いていたらいろいろな事を思い出して、「ルーツはあの時間にあるな」と思いました。
BEAMS Tの企画で開催された個展『KILLER DREAM』。6月にイースト・ロンドンを本拠地とするセレクトショップ「GOODHOOD」、8月に「BEAMS T原宿」と巡回して開催された。タイトルである『KILLER DREAM』は、イギリス留学を機にアートの道を志したHIROTTONが、ロンドンでの個展開催をキャリアのマイルストーンに設定していたことから、自身のルーツを辿る“DREAM”と、寝ているときに見る夢の“DREAM”が着想源となっている。作品には従来のスタイルをそのままに“夜”をイメージした背景が多く、HIROTTONを象徴するスカルやアニマルのペインティングが幻想的に引き立っていた。
──欲しいものはありますか?
あまり物欲はないです。でも広いスタジオは欲しい。今回のスペースみたいに大きなものを気にせず描ける場所があるといいなと思います。あとは車。ずっとボルボが欲しいですね。
──活動歴は13年目ですね。表現はどう変わってきましたか?
モチーフはドクロとか生き物とかで、そこは変わらないです。昔はTシャツに落とし込むことをまず考えて描いてたけど、最近はキャンバス作品も増えて、構図とか色とか、技術的な部分を意識するようになりました。
──作品で大事にしていることは?
現実にありそうでない空間を描くのが好きです。海なのか空なのか分からない景色に魚が泳いでいたり、動物に目が三つあったり。今回のHIDDEN WALL用の作品は横長だったので、覗き込む髑髏を描いて、そこに古代魚を入れたりしました。自分の道を照らすという意味を込めて「Light My Way」と文字を入れてます。
──創作に行き詰まることはありますか?
結構あります。展示前とか特に。そういうときは無理して描かずにスケートに行ったり、ジムで走ったり、風呂に入ったりします。体を動かしてリフレッシュしているとアイデアが浮かぶんです。徹夜は効率が悪いのでしません。昔からそうです。やるなら早起きして描きます。
池尻大橋にある「CEKAI」での個展では、スペース内に小屋が建てられ、その内側全面にもアートワークが施されていた。「この小屋は、10年以上の付き合いになるスケーターであり大工の友人たちに協力してもらい形になりました。1枚の下絵を渡したことから始まり、時間がない中で彼らのセンスも合わさり、予想以上の完成度に。小屋の中に入れば、内側に描かれたアートワークを360度全身で体感できるようになっています」。オープニングパーティーには、会場から溢れるほどの人が詰めかけていた。
──活動を続けてきてとても活躍していると思いますが、今の自分をどう感じますか?
日本での活動を始めた13年前の自分から見れば、今アートで生活できているのはすごいことだと思います。展示もできているし、当時の自分なら「頑張ってるな」って思うはず。でもまだ満足はしてないです。もっと海外でも展示したいし、まだまだやれることがあると思ってます。
──HIDDEN WALLプロジェクトでのSORToneでの展示内容について教えてください。
タイのアーティストTRKとの合同展として行います。6月にタイで一緒に展示したんですけど、今度は日本でという流れです。TRKは大きな壁画を描いていて、タイのスケートシーンにも深く関わってる。実際会ってみたらすごく気さくで、酒好きで、絵も早い。リスペクトしてます。
──最後に読者へメッセージを。
自分も普段から長い時間を絵に費やしていますけど、もっと描いてる人は絶対いる。だから「これだけやったからいいや」じゃなくて、もっと攻める気持ちを持ち続けたい。そういう思いで描き続けていきたいです。
【イベント情報】
“Believe It or Not?”
HIROTTON & TRK duo exhibition
- 会期 :
- 2025年11月8日(土)〜 2025年11月16日(日) *月、火曜日休廊
- 時間 :
- 13:00 – 19:00
- 会場 :
- SORTone
- 住所 :
- 東京都渋谷区神宮前2-14-17
- Instagram :
- @sortone_fort
- *Opening reception: 2025年11月7日(金) 18:00 – 21:00























