
ISSUE #76
Spring 2025
「鷹が伝説のデッキを見つけた」という想像のコンセプトによる秀作。
限定のシルクスクリーン作品「絵士道」も同時公開。
Interview: Ryosei Homma
渋谷のストリートとハイファッションが融合したコンセプチュアルショップ「MORTAR(モータル)」とHIDDEN CHAMPIONによるコラボプロジェクト第二弾として、昭和レトロなデザインと欧米のカウンターカルチャーのテイストを融合させるアーティスト「遊鷹(YUTAKA)」がフィーチャーされた。
「鷹が伝説のデッキを見つけた」という設定のもと、MORTARの店内にある「富士山」をモチーフにしたスケートセクションやカーブボックスなどが描かれたアートワーク。その作品を用いて、Tシャツ、鯉口シャツ、手ぬぐい、提灯などのプロダクトが制作され、2025年3月14日よりMORTAR TOKYOにて販売がスタート。さらに同日より遊鷹氏のアートショーの開催と共に、〈SLD SKATEBOARDS〉と遊鷹氏のコラボデッキの発売、そして「Hidden Editions」よりシルクスクリーン作品「絵士道」もリリースするなど盛りだくさんな内容。
ここでは、そのアートワークとともに、遊鷹氏のバックボーンなどを聞いたインタビューを紹介したい。
―遊鷹さんは、名前にもある“鷹”をアイコンによく描かれていますよね?
遊鷹という作家名は本名の裕(ゆたか)に由来します。本名で活動したい願望があり、あて字を考えていた時に、元々鷹や鷲を描くことが多かったので
“鷹”という文字を使いたいと思ったんです。それから「ゆ」をどうしようかと考えていた時に「遊ぶ鷹」という意味がいいなと思い、「遊鷹」と組み合わ
せました。その名前を付けてからは特に鷹をメインキャラクターとして描くことが多いですね。
遊鷹氏のスタジオ、内観と外観
―アトリエにはスケートのデッキやスノーボードがありますが、自身もボードカルチャーに触れていたんですか?
最近は全然乗れてないけど、中学生くらいからスケートボードはやっていましたね。それからサーフィン、スノーボードもやりました。そういうボー
ドカルチャーやストリートカルチャーがすごい好きで、デッキのグラフィックなどもかっこいいからそこから影響を受けているのは間違いないですね。
〈Zorlac Skateboards〉にグラフィックを提供していたPUSHEADはすごく好きですね。そういったカルチャーの中にいる人達はかっこいいですよね。
―最近、SLDからスケートデッキがリリースされることが発表されましたよね?
〈SLD SKATEBOARDS〉のイトシン(伊藤慎一)と一緒に飲む機会が何度かあってコラボすることになり、6種類のデッキが発売になります。他にもこれまでに〈MAGICAL MOSH MISFITS〉や〈坩堝〉にもデッキのデザインを提供しています。
MORTARでの展示風景
―今回MORTARのために描き下ろした図案には、どのような意味が込められていますか?
“鷹が伝説のデッキを見つけた”というストーリーですね。他にも“MORTARでお気に入りの板を見つけろ!”みたいな意味も込めています。富士山はMORTARの店内にある特徴的なセクションで、その下の台は什器兼カーブボックスを模して絵に取り込みました。
―クライアントワークを多く手がけている印象がありますが、そういった仕事で面白かったものなどありますか?
何度か車に直接ペイントしましたが、大変だけど面白かったですね。他には食べ物を描くのも面白いですね。僕の作品のタッチでハンバーガーとかロコモコとかを描くのはいままでに見たことの無い物が描けるので楽しいですね。もともとグラフィックデザインをやっていたので、ある程度デフォルメしたものを看板的な要素でまとめるのは得意なんですよ。
―現在の遊鷹さんのスタイルは、昔のマッチラベルや昭和の看板などのビジュアル要素から影響を受けているものが多い印象です。
昔はアメリカンカルチャーの画風を模したものや点描画なども描いていたんです。だけど海外に行く機会の中で、やっぱり日本人として自国の良さに気付かされるタイミングがありました。そういう時に元来好きだったマッチラベルやレトロな広告により惹かれていって今の表現に辿り着きました。
―なぜ絵を生業にしようと思ったのですか?
高校生の時に自分の机の上に落書きしまくってて、それを見た担任が三者面談の時に「この子の絵はすごいからそういう進路に進んだほうがいいと思う」と親に言ってくれたんです。それからその道に行くのもありかなと思い始めて、デザインの専門学校に進みました。その後アパレルの会社に入ってTシャツのデザインなど、いわゆるブランドのグラフィッ
クを担当していましたね。会社に勤めながらもたまに個展やクライアントワークをやっていましたが、次第にオーダーが多くなり、時間が足りなくなったので独立したという経緯ですね。
―その高校生の頃の机にはなにを描いていたんですか?
グラフィティみたいなものを鉛筆で描いてましたね。クラスには同じように机に落書きをしている連中が何人かいたんですが、自分で言うのもなんですが、その中で俺の絵はやりきっているというか、クオリティの違いを感じていました(笑)。ノートに描いた絵は開かないと見せられないけど、机に直接描けばいつでもみんなに見てもらえるじゃないですか。ある意味で自己主張ですよね。机一面にバーッと描いて、飽きたら消してまた新しいのを描くっていうことを繰り返していました。それを先生は見ていてくれて、「この子はヤバい」って親に言ってくれたのは嬉しかったですね。
過去に行ったカスタムペイント
―現代芸術家で好きな作家はいますか?
山口晃さんや天明屋尚さん、松井冬子さんなどが好みですね。最近は野口哲哉さんが気になっています。やっぱり日本画のようなスタイルが好きで、みなさんに共通しているのですが、凄い緻密な絵の迫力に圧倒されるんです。山口さんは油絵の手法で日本画を描いていたり、天明屋さんは日本画と西洋文化を組み合わせていたり、そういった和と洋を合わせて現代に落とし込んでいる作品から影響を受けていますね。
―最後に今後やりたいことなどがあれば教えてください。
やっぱりクライアントワークでのモノ作りが好きですね。いままでにやったことのないジャンルのクライアントから新たなお題が出て、それに向かって制作することが楽しいです。その中で誰も作ったことがないようなものを作ってみたいですね。目の前の物を一つ一つコツコツ描いてきたことが、結果的に他の面白いことに繋がってきて今があると思うので、今後もそういう風に一つずつ前進していきたいと思っています。
Hidden Editions #05
MORTARで先行発売していたHidden Championからリリースするプリントシリーズ『Hidden Editions』の第5弾として、遊鷹氏の初となるシルクスクリーン作品をオンラインストアで明日3月20日の12時から販売いたします。この作品は作家の名前にもあり、よくモチーフとして使用する“鷹”に絵筆を持たせた、絵描きとして生きる遊鷹氏の心意気を反映させたような作品です。また、この「絵士道」は、作家自身初のシルクスクリーン作品となっており、B3サイズでシボ感のある厚手の紙にブラックとレッドの2色を用いてプリントし、 遊鷹氏自身の手書きによるエディションナンバーとサイン、さらにHIDDEN CHAMPIONのエンボスを押して仕上げています。
遊鷹 / Yutaka
絵士道, 2025
364 x 515 cm(B3)
Silkscreen printing, Edition 25
Signed by the artist, Embossed by HIDDEN CHAMPION
こちらからご購入いただけます。
【展覧会情報】
MORTAR TOKYO×遊鷹×SLD COLLABORATIVE EXHIBITION
会期 : 2025年3月14日(金)〜 2025年3月23日(日)
時間:11:00 – 20:00
※会期中無休
会場 : MORTAR TOKYO
住所:東京都渋谷区神南1-3-4 神南ビル1,2F [MAP]
Instagram:@mortartokyo