
Interview with
SOLID BLACKLINE
黒線が紡ぐ、日本文化とストリートカルチャー
埼玉県の北部を拠点に活動するSOLID BLACKLINE。
日本文化とストリートカルチャーが交差する彼の作風は、豊かな自然や、日本古来の伝統をテーマとしながら、黒い線で描く独特の世界観にある。
変わらない風土や人々の繋がりに根差した“連なり”を大切にする姿勢が宿る。
オルタナティブな視点を持つ彼との対話は、現代人が忘れかけている大切な視点をそっと思い出させてくれる。
- Text & Edit_
- Toshihito Hiroshima

──まず始めに簡単な自己紹介をお願いします。
1993年に山梨県富士吉田市で生まれ、現在は埼玉県の神川町という場所を拠点に生活しています。主に黒い線を使って絵を描いたり、ライブペイントや壁画の制作などをしています。他にもロゴや装飾のデザイン、そして黒線屋(くろせんや)という名義でものづくりをしています。
──絵を描き始めたきっかけはなんですか?
幼少期から絵を描くことが大好きで、いろんなものを模写しては友達によく見せたりしていました。小学校の頃は、週末に地元の小学生を集めたワークショップがあって、土偶作り体験や川の生物の観察会に参加したり、そういうモノづくりや自然体験が好きでしたね。グラフィティやヒップホップは中学生の時はあまり知らなかったのですが、進研ゼミの教材の中に「読者おすすめのアルバム」という紹介コーナーにKREVAが載っていて、「こんな人がいるんだ」って思って聴いたのが、ヒップホップとの最初の出会いですね。その当時は僕の周りにはヒップホップを好きな人がほとんどいなかったので、自分でクルーを組んだりすることはなく、オタク的な感性でヒップホップを掘っていったという感じですね。

──ヒップホップが好きになり、そこから自然にグラフィティにも興味が湧いていったのですか?
美大に進みたくて予備校に行っていたのですが、そこの先生に「君はヒップホップが好きなら、グラフィティは絶対に知っておいた方が良いよ」と言われて、『グラフィティ・ワールド』という本を貸してもらい、そこで初めてしっかり触れました。
──美大に進んだのですね。
はい。無事受験に受かり、東北の美大に行きました。そこではファインアートではなく、プロダクトデザイン学科に入りました。予備校の先生にグラフィックデザイン学科よりもプロダクトデザイン学科に入った方がいろんなことができると言われたことがきっかけでした。その学校はスケボー部があったりして少し変わっていましたね。何人かの友達とクルーを組むことになり、“SOLID”という名前が誕生しました。当時からずっとペンを持って何か描くことが好きで、ある時、黒い筆ペンを持ったのですが、その線の流れが気持ち良いなと感じて使うようになったんです。そして大学で学んだプロダクトデザインの勉強により、空間のデザインに意識が芽生えました。当時は大学のデザインの授業と自分の好きなアンダーグラウンドなカルチャーが交わらなかったのですが、その両方に身を置いていたことにより、今ではその二つが交わっていると思います。
──いま描いている絵について教えてください。
僕の作品は黒い線を主体として、ストリートカルチャーから受けた影響に、日本古来の伝統・風土などの美意識を含め、和テイストでサイケデリックな世界観を描いています。その線を使って万物を描いているという感覚です。自然がテーマなので直線ではなく曲線を描いています。黒色を使っている理由は、ハッキリと見えて締まるところが好きですね。ぼやっとしているのがあまり好きではないんです。学生時代はお金もないけど絵を描きたいじゃないですか。それで黒いペンなら一番安くて身近に手に入る。そしてずっと描き続けていたから黒い線が一番しっくりくるんです。プラモデルとかでも「墨入れ」という影を表現するために黒い線を入れますよね。それはグラフィティでアウトラインを描く時とかも同じ感覚だと思います。音楽のジャンルでもブラックミュージックが好きだし、「黒い」という言葉も渋くて好きですね。黒は無に近くて、ゼロに近い感覚だと思っていて、そういういろんな意味で黒が好きですね。
──今まで開催した展示について教えてください。
展示は何度もやっていますが、2019年にそれまでの平面作品以外の表現もやってみたくなり、レコードジャケットの上に絵を描いた作品を100枚展示する企画を梅丘のQUINTETで行いました。展示のフライヤーを配っていたタイミングでDJのMUROさんが代官山UNITで回していたので、フライヤーを直接渡しに行ったんです。すると展示の一週間前くらいに、MUROさんと一緒にラジオ番組をやっているMACKA-CHINさんから電話があって、『KING OF DIGGIN’』の公開収録があるからライブペイントをしてほしいと言われてスタジオに行ったんです。そんな流れもあり、僕の展示初日に一番最初に来てくれたのがMUROさんだったんです。MUROさんがインスタグラムでリポストしてくれたこともあり、そこからいろんな人が見てくれるようになりましたね。結果、沢山の人が見に来てくれました。


──SOLIDさんのスタイルからは和を感じさせますね。
レコードジャケットの展示を終えると、次に何か新たなことをしたいと思ったんです。和物のレコードジャケットによく絵を描いていたし、墨とか筆を使っているので「和」が自分に合っていると感じたこともあり、もっと日本文化についてしっかりと勉強しようという思いが生まれました。そしてどこから勉強しようかなと思った時に、東京大丸で『東京手仕事展』という現代の伝統工芸品に着目した展示が行われていたので行ってみました。その展示で木目込人形を作っている会社の人と出会い、話をしてみると「君の絵は屏風屋が気に入ると思うよ」と言ってくれて、紹介して頂いたのが都内唯一の屏風専門店〈片岡屏風店〉です。その出会いによって自分の日本文化に対する興味は大きくなり、屏風や古物などの物に絵を描くようになりました。そこから少しづつ日本文化を体に染み込ませていくようになりました。
──現在の活動拠点についても教えてください。
現在は埼玉県の北部の田舎で生活しています。この町に引っ越した理由は、コロナウイルスが蔓延した2020年をきっかけに、仕事がリモートになったこともあり、自分の生活を見直したことと日本文化への興味が強くなったことが理由です。それまでは都内のデザイン会社の仕事が忙しくて、作品制作を続けながら仕事に行っていました。生活のリズムも悪く、それによりストレスで食生活が荒れて、ある時は30kgくらい体重が増えてしまったんです。それで食事を見直して野菜の直売所に行ってみたり、自分で料理をするようになりました。そういう理由と、2019年のレコードジャケットの展示によって制作に対する自信も付いてきていたことも合わさり、広いアトリエが持てる場所に引っ越したいと思ったんです。そして埼玉県の神川町の隣、美里町にある友達のお店のロゴをデザインしたこともきっかけとなり、思い切って引っ越しました。


──ブランドとのコラボレーションも行なっていますが、今まで行った面白いプロジェクトはありますか?
今までたくさんのブランドとお仕事をさせていただきましたが、その中で面白かったプロジェクトは、ワークウェアのブランドからの依頼で、自分がデザインした防水グローブが〈ワークマン〉で販売されていたことですかね。その当時は都内にいて作業着とは縁がない環境であまり興味がなかったのですが、ローカルに点在する働く人(ワークマン)の味方に自分のデザインしたものが置かれていたことは、今となってはとても誇らしく思います。あとは〈Apple〉の『Macの向こうから』という企画では、47都道府県でMacを使っているクリエイターに埼玉代表として選ばれました。〈G-SHOCK〉のプロモーションで自分のアートワークを提供したこともあります。その時は「AW-500」がリデザインのモデルだったので、「温故知新」という文字を入れてデザインをしました。あとは2022年の「X Games」で〈ManhattanPortage〉 がブースを出展していて、そこに4人のアーティストがカバンにカスタムペイントをするということを行い、オリジナルでカバンをデザインしました。最近のプロジェクトだと、一般社団法人日本ストリートサッカー協会とコラボでストリートサッカー用のボールのデザインをしました。これはサッカーボールの一マスずつ模様が異なるように制作しています。多くの人に届くものを作れることは光栄なことだと思うので、これからも色々とやってみたいですね。
──今後の展望は何かありますか?
まだ訪れたことのない県も沢山あるので、日本全国をまわってみたいと考えています。描くことや今後の展開は無限の可能性があると思いますが、インターネット上で自分の作品が出ていることよりも、実際に自分の手で残すことが大事だと思っています。そして、いろんな人に手に取ってもらって、それが後世まで続くものを作りたいですね。最終的にワールドワイドな動きもしたいのですが、今は日本文化のことをもっと知りたいという気持ちがあるし、もっと身近なローカルでの制作や活動がとても大事だと思っています。壁画を描く機会も増えているので、もっと作っていきたいし、あとは立体物もさらに作りたいと考えています。それらと並行して線の修行は続いていきます。僕のスタイルは、10年以上前に筆を持った時から始まっていて、僕が見たものや感じたものが直接的に線に反映されると思っているし、いろんな人とのセッションや関わりによって成り立っていると思っています。決して一人では成立しないと思うんです。とにかく、この線の追求を続けていくことが一番の目標ですね。

SOLID BLACKLINE
ストリートカルチャーを主軸とし、日本古来の伝統・風土・原風景に日々影響を受け、表現し続ける。和製サイケデリックでありながら日本人が持つ優美繊細な感覚を黒線(くろせん)と称された独自の流線模様で万物を描き出す。
Instagram: @solid_blackline
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