Interview with
VIEW

都市に潜み、その熱量をシーンの発展に注ぐ

ストリートに根を張る都市のアンダーグラウンド・カルチャーであるグラフィティ。その影響を受け、受け継ぎ、いまも体現し続ける存在の「VIEW」。街角に残されるスローアップやタグは、一見するとシンプルに見えるかもしれない。しかし、その背後には日々スタイルを更新し、長い時間をかけて積み重ねてきたライターたちの実践がある。

その文脈に強く惹かれてきたVIEWが、BEAMS Tにて、アパレルブランド〈MAINTAIN〉を巻き込み、これまでの歩みの集大成とも言える個展『Escape From The Evil Planet』を開催する。ストリートで培った原点、現在地、そして次の世代へ向けた視線。ここではそのすべてを過剰な装飾なく、率直な言葉で語ってもらった。

Edit_
Ryosei Homma

──カルチャーに触れたきっかけや、幼少期のことは覚えていますか?

中学くらいの時にパンクにハマったんだよね。だけど地元は田舎で本屋くらいしか好きな情報を集める手段がなくてさ、当時は携帯もなかったし。その頃は宝島から出てた『STREET ROCK FILE』ってマガジンをよく見てて、そこに載ってたパンクの人たちはタトゥーがびっしりで彫ものに興味持つようになった。高校生くらいの時にパンク・アーティストのタトゥーを紹介する本がちょうど出て、それに下絵とか載ってて少しずつ絵の描き方について理解したよ。あと、母親から「小学校の頃から風神、雷神みたいな絵をよく描いてた」って言われたこともある、俺はあんまり覚えてないけど。その時はあんまり落書きとかグラフィティを意識してなかったかな。

──グラフィティを認識したのはいつ頃ですか?

高校を出て上京してからだね。当時はバンドがやりたくて、バイトしながらフラフラしてたんだよ。ある日、新しく始めたバイトのミーティングで集まった時にグラフィティがめちゃくちゃ好きなやつがそこにいてさ。そいつはパンクも好きで、住んでる場所も近くて気が合ったんだよね。それがKUDARAってやつなんだけど。そこから少しずつグラフィティを意識し始めた。夜中にみんなが飲んでる中、そいつだけがさっといなくなるタイミングがあって、なにしてるんだろうと思ってついて行ったらコソコソ書いてて。ボムを目の当たりにしてさ。それでカッケーってなった。

──そうして東京のクルーとディールするようになったんですね。

ちゃんとグラフィティを始めてから10年くらいやって、流れで246に出会った感じかな。今は離れてるけどね。最初の頃はほんとに遊びだった。タグも決まってなくて友達に考えてもらって、その辺に書くみたいなノリでさ。自分のスタイルをちゃんと考えようって思ったタイミングで、KUDARAと一緒にトラブルになっちゃって。それがひとつの原因にもなってあんまり連絡が取れなくなった。教えてくれた人がいなくなってモヤモヤしたけど、もう自分は完全に中毒だったから一人で続けてたんだよね。ペンだけでうろうろしながら、だんだん本質を求めて本気でのめり込んでいった。

──昔貼ってたステッカーなど、イラストっぽいものもありましたよね。街でも散見できます。

トラブルが解決したぐらいの頃にめちゃくちゃステッカーを作ってたんだよね。ローラーでステッカーを貼るイラストの絵とか自分の手書きなんだよ。ステッカーも全部シルクスクリーンの手刷りだった。結局シルクで刷ったものが劣化しなくて一番残るんだよね。でも、そういうもの作りのノウハウがあったっていうより、パンクのDIY精神が強かったから「Tシャツくん」とか使って見よう見まねでやってた感じだった。自分で書いて自分で刷るのが当たり前だったんだよね。パンクのファンZINEとかもレコード屋で見てたけど、グラフィティもZINEが根強いと分かって、これもつながってるんだなって感じてた。

──書く場所のこだわりってありますか?

街で遊ぶようになってしばらくすると“ここにハメたい”って感覚が出てきてさ。最初は場所を深く考えずに書いてたけど、都市にあるボックス・スタイルとかいろんなのを見ていくうちに自然とスタイルを研究するようになって。ここに書いたら良い感じに見えるとか、ここにハメたらこっちにもハマるじゃんとか、そういうのを考え始めるとグラフィティがパズルとかゲームみたいになってくる。そうなると数が増えていくんだけど、今は逆にめちゃくちゃスポットを選んでる。面白いところにしか書きたくなくなっちゃって、逆に街に出ても全然書けない時もあるくらい。写真の映りも考えるようになったし、ただ汚い場所よりちゃんとハマる場所の方が自分でもテンション上がるんだよね。今はもう数じゃなくて、場所と質。

──今回のBEAMS Tでの展示『Escape From The Evil Planet』にはどんな想いが込められていますか?

社会にはいろんな沼があるじゃん。足の引っ張り合いもあるし、トラブルになることも多い。だから展示のタイトルも沼ってるところから抜け出せって意味があるんだよね。展示をやるライターをよく思ってない人もいると思うけど、アンチとかそういったのも含めて沼から出るための選択なんだ。

──展示に対する姿勢も外と同様に積極的ですね。

グラフィティって基本的に誰の許可も必要ないもの。自分の意思だけあれば外に出て描ける。でもそれって自分の中ではよくても、やめてほしいって思ってる人もいる。最初はそんなこと考えずにやってたけど、続けてるうちに、応援してくれる人とか受け入れてくれる人が増えてきた。今回の展示も自分で企画したというより、BEAMS Tから声をかけてもらったのが大きくて。今まで無差別に許可なくやってたことが、誰かからちゃんと許可をもらえたっていうのが、すごく新鮮で嬉しかったんだよね。人とつながって何かをやるグラフィティって、案外いいことなんじゃないかなって思えた。いいって言う人もいれば、よく思わない人もいるけど、そういうのも全部ひっくるめて受け止めながら進んでいくのが、生きるってことなんだと思う。展示のオファーも自分にとっては一つの成功体験で、それをちゃんと次の形に変えていきたいって気持ちもある。

──街での活動と展示に大きな違いはありますか?

初めて展示したのは大阪でのグループショーだった。その時に初めて展示用に作品を作った。同じスローアップでも、街に書くのとキャンバスに描くのでは別物。展示は人に見てもらう前提で描くから、自分の意思だけじゃうまくいかないところがある。ボムは“これが最高っしょ”って自分の感覚だけで街にぶち込めるけど、作品は売れなきゃ次がないからさ。だからアドバイスを聞いたり、人の意見を取り入れるようになった。人の気持ちをちゃんと考えないと、いい作品はできないと思うようになってさ。グラフィティとかボムは、自分の中に頑固さがないとダメだと思ってる。作品はもう少し寛容になって、パンクのジャケットとかポスターとか、そういう別のカルチャーからもインスピレーションをもらう。正直、作品を作るのはボムより全然きつい。時間も労力もかかるし、どんな家に飾られるんだろうとか考えながら描かないといけない。でも街にハメるのと同じで、展示とかって別のハメ方を探ってる感覚なんだよね。

BEAMS T x MAINTAIN x VIEW コラボレーションプロダクト

──今回の展示では〈MAINTAIN〉というアパレルブランドともコラボレーションしています。関係性について教えてください。

家にいるときずっと絵を描いてて、それを面白がってくれた友達が服にプリントすればって言ってくれて。俺も服に合うものがかっこいいっていう感覚がずっとあってさ。たまにそういう絵を描いてデザインとして〈MAINTAIN〉に提供するんだよね。服ってめちゃくちゃ露骨で、知り合いとかの服を着るってストリートではすごく重いことだし、実はそこに面白味もある。グラフィティライターが服を作るっていうのも、その延長線だと思ってる。街で見たのをきっかけにTシャツを買う人がいたら、それもある意味ボムだと思う。なにが良いのか理由が分からなくても、どこかに刺さったならそれでいい。

──展示も行いつつ、最近はどういう思いでグラフィティと接しているのですか?

がむしゃらな初期衝動から、街にハメていくのが楽しくなって、同時にカルチャーを繋いでいきたいって感覚が芽生えたんだよね。グラフィティって日本だと超スモール・カルチャーだけど、自分が関わってきたグラフィティ・ライターって本当に面白い人たちが多い。だから自分が感じたこととか経験したことを若い世代に一個でも繋げられたら、それが俺のやるべきことなのかなって思ってる。次の世代、その次の世代に繋いでいった先で、もっとデカいものになったら面白いなって。ニューヨークみたいに、グラフィティ・ライターがポップスター的な感じで日本でも神格化されるのもカッコいいじゃん。そうなるためには誰かが繋いでいかなきゃいけないと思ってて。だからグラフィティだけじゃなくて服とかマガジンとか、いろんな媒体を使って外と繋がりたい。グラフィティ・カルチャーってライター同士で完結しがちだから、ちょっと気になってる人とかファンはどうしても置き去りになっちゃうんだよね。そこをもっと開きたい。わかりにくいカッコよさはもう十分あるから、俺はあえて前に出る。インタビュー受けるのもそのひとつだし。様々なカルチャーが繋がらない世代があって、消えかけているのを目の当たりにしているから、同じことがグラフィティで起こって欲しくないんだ。原宿の真ん中で酒飲みの落書き野郎が展示してるだけでも十分カルチャーだし、“なんだこれ?”って気になった人が一人でもいたらそれで繋がる。教えなくていい、見て感じてもらえればそれでいい。

──では、オーディエンスが写真を撮ってSNSに上げることについては?

全然あり、むしろありがとうって思うよ。世界的にそれが普通で、みんな勝手に街を撮って勝手に上げてる。日本だとちょっと警戒されるけど、よく考えたらただ街のものを撮ってるだけだよね。俺が街に書いて、誰かがそれを撮って自分のアカウントで上げる。それってやってることは一緒だと思ってる。オーディエンスが写真を上げてくれるのは一緒にカルチャーを盛り上げてくれてる感覚だし、実際に自分で発信するよりそっちのほうがよっぽど届いてる。そもそも街に書くってこと自体、誰かに見てほしいってことじゃん。見られたくないなら家の中に書けばいい。だから良い意見や悪い意見は見てくれた反応だから、自分にとっては全部プラスだと思ってる。評価はいらない、勝手にやってるだけって言う人もいるけど、街に書いてる時点で誰かに認識されたい気持ちは絶対ある。そこは否定しないほうがいい。俺の場合、今はただ認められたい段階を超えて、求められた時になにを出せるかってフェーズに入ってきてる。展示やったり、人とつながったり、街に書くだけとはもう違うゲームなんだよね。だから今はグラフィティだけじゃなくて、人としてどう振る舞うかも大事になってるんだ。

──グラフィティが商品化されたり、消費されることについて否定的な意見もありますよね。

俺の中ではグラフィティってただの落書きなんだよね。自分が好きで始めただけの、本当にそれだけ。だから“消費される”とか“商品になる”って別次元の話なの。誰かがこれを商品にしたいって言ってくれるなら感謝だよ。だって落書きだよ? それを誰かが価値あるって思ってお金払ってくれるなら、今の段階ではもうそれだけで十分ありがたい。起きてもいないことに対して“商品化はダメだ”って言うのは違うし、まず起きてから考えればいい。実際に世の中に出てどう感じるかなんて、その時じゃないと分からないから。俺は美術の学校も出てないし、ただ一生懸命に書いたり作ってきただけ。そんな俺の落書きを誰かが見て応援してくれるなら、それで今はもう十分すぎる。頭で否定するんじゃなくて、とりあえずやってみる。そしたら理解ができる。それがグラフィティの一番コアな部分だと思ってるよ。

──グラフィティで影響を受けたライターはいますか?

グラフィティを教えてくれたKUDARA、それとSLOW。他にもMQはずっと好きだね。もちろん246も。名前書くだけで場の空気が変わるじゃん。それくらいヤバい人たちで、日本にはなかなかいない存在だと思ってる。他にも『INFAMY』って映画にも衝撃を受けたね。最近はちょくちょく海外に行くから、その都市の空気感とかにも感化されるんだよ。

──好きな絵描きはいますか?

大阪でハードコアのフライヤーを描いてるSugiさんかな。彼が描く点描の密度がとにかく忘れられない。以前、B GALLERYでハードコアのフライヤー展に行ったんだけど、原画は印刷されたフライヤーで見るのとは全然違って本当に食らった。写真より、生で見るのがなにより最高だし、グラフィティもその部分は同じだと思う。

──感化された海外のグラフィティ・シーンはありましたか?

台湾に行った時、台北でローカルのスタジオに泊まってた。そして台中に行って、夜から朝9時まで十数人でボミングしてさ。若い連中のエネルギーがとにかくすごい。島は小さいけど、グラフィティの熱はめちゃくちゃあるし、英語もみんな喋れてネクスト感があったね。今のニューヨークは完全に別次元で、ロープで高層ビルの上から縦に描くスタイルが当たり前になってる。ボムのスタイルもどんどん変わるから自分で動いて現場を見ることが楽しいんだよね。

──グラフィティ・カルチャーの中にいる人たちは、大きな熱量を持っている人が多く、その反面ぶつかる場合もあると思います。若い世代に一番伝えたいことは何ですか?

どのカルチャーにも痛い部分やトラブルはあるし、傷つくこともある。でも俺はよく聞くような“地獄みたいな経験”はあんまりしてなくてさ。なんでかって考えたら、ずっと“ブルーハーツみたいになりたい”って気持ちでやってきたからだと思う。セコいことしないで、曲がったことをせず、ただまっすぐ一生懸命に突っ走るだけ。それだけでやってきたから、逃げたくなるような目にもあんまり合ってない。だから、うまくやる前にがむしゃらに一生懸命やること。若いと近道や得する方法を先に考えがちだけど、ブルーハーツみたいに正直に、まっすぐ情熱で突っ走った方が、結果的に遠くまで行けるんだよね。情熱って変なトラブルも悪い縁も弾き飛ばす力があるから。

──将来やり遂げたい目標はありますか?

起きて、飯食って、仕事して、歯磨いて、寝るだけ。人生って本当はめちゃくちゃシンプル。人の関係が勝手に複雑にしてるだけで、最後は好きなことを一生懸命やる。あと、拠り所みたいな場所は絶対に必要だと思う。SNSがあっても、たまり場がないとカルチャーは育たないから、いつかそういう場所を持ちたい。みんな生活がギリギリだし、Tシャツ一枚でもピンズ一個でも、その応援が次につながるから。プレイヤーもオーディエンスも同じチームで、このカルチャーを一緒に残していく感覚でいたい。スローアップの形ひとつでも今のものになるまでにすごい長い年月をかけたし、これからも爪を研ぎ続けて進化していくよ。

【イベント情報】

VIEW SOLO EXHIBITION 『Escape From The Evil Planet』

会期 :
2026年1月23日(金)〜 2026年2月1日(日)
時間 :
12:00 – 20:00
会場 :
BEAMS T HARAJUKU @beams_t
住所 :
東京都渋谷区神宮前3-25-15 1F

Latest Post