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Aki Yamamoto

多面的に見つめる「街路樹」

Interview:Hidenori Matsuoka



幼少の頃から絵を描くことに親しみ、近年は自身を投影しているという「街路樹」をモチーフにした作品を展開しているAki Yamamoto。

街路樹でありながら、グラフィティの要素を取り入れた独自の造形。

その作品群は、見る者に本来の姿とは異なる多面的な視点を訴えかける。そしてその視点の変化は、スクリーントーンをはじめとするユーモラスな素材を加えることによって、作品の細部においても新たなインスピレーションを感じさせてくれる。

2025年4月11日から「SORTone」で開催する個展「I Can’t Walk」を控える彼に、ここに至るまでの軌跡を振り返ってもらった。



まず始めに、簡単な自己紹介をお願いします。

1997年生まれで東京を拠点に活動しています。グラフィティ文化の影響を背景に近年はブランドなどへのグラフィックの提供や、3Dの立体物の制作、ペインティングやドローイングなどを主に行っています。

バックグラウンドについて教えてください。

父親が音楽をやっていたり絵本を描いたりしていてそういうことを間近で見て育ったので、絵を描いたり何かを作ることが割と当たり前の環境で育ちました。なので幼い頃からずっと絵は描いていました。地元にSITOcrewのKABIS というグラフィティライターがいるんですが、家の近くに彼のグラフィティがたくさんあって小学生くらいの頃から「これは何だろう」と思っていて、ある時親が見せてくれた映画にグラフィティのシーンがあり、それがきっかけでグラフィティを認識しました。そこから意識的に街を見るようになって今もグラフィティに影響を受けています。

両親も音楽やアートに関心があったんですね。どんな両親なんですか?

父は私が小学生くらいの頃まではスカのバンドをやっていたのでライブハウスなどには物心がつく前から行っていました。母も自分で服を作ったり、陶芸をしたり、そういう何かを作ることが当たり前にある家族でした。家で使う食器は殆どが母が作ったものでした。

学生時代はどのようなことをしていましたか?

中学3年生くらいのとき、KABISに認識されたいという衝動でグラフィティを始めました。KABISのグラフィティは一目で彼のペイントだと理解できるところや、他の人とは明らかにスタイルが違うという事が、グラフィティを知って間もない中学生の自分にもすぐにわかり、とても憧れていたのを覚えています。しばらくして共通の知人からKABISを紹介してもらい一緒にペイントをするようになり、色んなことを自分は教えてもらったと思っています。高校時代は大阪のアメリカ村に「TATSUO TACOS」というタコス屋さんがあったんですが、グラフィティライターの人たちがよく展示をしたりHIP-HOPのイベントをしたりしていて、そこでやっていたパーティに遊びに行っているうちにオーナーのタツオくんに「バイトするか?」と声をかけてもらいアルバイトを始めました。そこで色々なアーティストやミュージシャン、DJ、グラフィティライターとも知り合うようになり色んな影響を受けましたね。

上京してからはどのような生活を?

上京してすぐに友人がキュレーションしたグループ展に誘われて初めて展示を知ることになりました。そこで展示をする際に初めてZINEを作ることになり、知り合いから「リソグラフ印刷をやってる友達がいるから紹介するよ」と紹介されたのがヒカルくん(Hikaru Takata)で、彼は「Puresu deTokyo」というインディペンデントの出版をやっているんですが、彼との出会いによって今も続けている自費出版でZINEや本を作ることのきっかけをもらいました。彼と吉田くん(吉田山)が運営していたギャラリー「FL田SH(フレッシュ)」でそれまであまり知らなかった現代美術の展示を見るようになりすごく影響を受けました。「FL田SH」で取 り扱っていた本にヨーロッパのグラフィティなどがあり、その当時はあまり知らなかったのでPALcrewなどのスタイルを知って衝撃を受けたのを覚えています。

それでは描いている絵について教えてください。

近年は主に「木」を描いています。この作風は2020年に「DOMICILE TOKYO」で行なった展示のあたりから描くようになったモチーフです。上京したばかりの頃、孤独を感じていた時期がありました。外に 出て東京の人の動きを眺めていたら、その群衆の動きに個がなくてどちらかというと人々が雲や空などとおなじ景色のように見えたことがありました。その景色の中にある街路樹が街に佇んでいて、木の ほうが人より個性的で自己があるように見えたんです。それで街を歩いている時の視点の中に木が加わって木の写真に撮るようになり、そこから自然と木の絵を描くようになっていました。描き出した時 はあまり意識はしていなかったんですが、描いていく中で木を自分として描いているんだろうと感じるようになりました。

木といっても独特な動きをしていますよね。

私が描いている木は多くが枝のような、根のような足が生えているんですが、木に自己投影をして木のことを考えた時に、木にも感情があるんじゃないかと考えるようになりました。ウォーキングパームと いう木を除いて、ほとんどの木は生えた、もしくは植えられた場所から移動することをなく成長をしていくと思うんですが、木にもし感情があり、もし私が木として生まれたなら一度は移動をしたい、歩きたいという感情が沸くんじゃないかと思ったことがありそのように描いています。

木のキャラクターたちはお互いに目を合わせている絵が多いですね。

私はよくタイトルで「gaze(視線)」という単語を使うんですが、それは街を歩いているときでもグラフィティだけでなく、建築物を見たり、広告でも視点や視線が増えれば街を歩き見ることで、それだけで生活が豊かになると思っています。見る視点を増やして、同じように見えるものも見ていると違いがわかるようになり、解像度が上がります。そういうことを作品を通して伝えられたらいいなと思っています。
作品の制作にスクリーントーンを使っていますよね。

最近は漫画で使われるスクリーントーンをよく使っています。近年は漫画の制作はデジタルに移行する人が多いせいか、実際に紙に貼るスクリーントーンを使わなくなって、メルカリなどで大量に出品していたりするんですよ。そのスクリーントーンの中には一部分だけ切り取られたものや、銃のモチーフや、動物、数式が書かれたものなど漫画であまり使われなさそうなものが多く、売ってくれた人たちの背景なども考えながら制作しています。あとはスクリーントーンの上にスクリーントーンを重ねて貼ったり、色鉛筆を併用したりなど、漫画を描く人たちがあまりしない使い方をしようとしています。

ペインターのオートモアイとの共作でのペインティングや、画集のアートディレクションを行うなど親交が深そうに見えますがオートモアイからの影響はありますか?

上京してすぐくらいに「FL田SH」で知り合い仲良くなったのですが、オートモアイは身近にいるアーティストで一番尊敬をしています。作家としての姿勢や、考え方、作品との関わり方など多くのことを教えてもらいました。制作ペースや、スタイルの多さ、インプットの量など身近にいるアーティストで彼ほどの人をあまり見たことがないですが、アーティストはこうあるべきだと認識させられました。
他に影響を受けたアーティストは誰かいますか?

画風で影響を受けたアーティストは特にいないと思っています。間接的な影響はあると思いますが子供の頃からただ好きでずっと絵を描き続けています。作風以外で影響を受けたのは、韓国に行った時「GENTLE MONSTER」でやっていたVERDYさんのポップアップで、自分の作品を楽しみにして見にきた人たちが、どこに彼のキャラクターが配置されていると喜ぶのか、写真を撮るのかなどファンが楽しめる装置が至る所にあり、視点にこだわったエンターテインメントが作られていて純粋に素晴らしいなと思いました。そのような感覚で最近はケニー・シャーフも好きです。彼の絵が純粋に好きなのもありますが、自分のキャラクターが拡張され続けてもなお彼らしいキャラクターを描き続けていることに尊敬しています。あとマインドで直接影響を受けたのはバリー・マッギーですね。バリーが恵比寿で壁画制作をしている時に、バリーのアシスタントで友人のDerek James Marshalと話しをしているとバリーが現れて紹介してもらいました。その時に「アーティスト? それともグラフィティライター?」と聞かれて、「両方やっているよ」って伝えたら「両方やった方が良いよね、作品見して」と言ってくれ、それでスマホで作品を見せたらすごくいいって言って貰えてとても嬉しかったです。さらに周りにいた他の人たちに「AKIっていうアーティストなんだけど作品が良いんだ、観て」って周りにいる人たちにも見せてて、本当に嬉しかったです。バリーは通りすがりのファンの人にもサインを丁寧に描いたり、 全ての人に対するリスペクトを感じました。さらに去り際に「Let’s Hug!」ってバリーからハグをしてくれたんですが5秒ぐらいで終わると思っていたら、体感1分ぐらいハグされたんですよ。それで少しびっくりして途中で離そうとしたら「今パワーを送っているから!」と言っていて、大木のようで本当に素晴らしい人だなと思いました。彼にとっては日常かもしれませんが、彼のオープンマインドで周りにいる人たちを幸せにしている姿には本当に影響を受けました。

4月に「SORTone」での「HIDDEN WALL™」企画での個展を行なっていただきますが、どのような展示になりそうですか?

展示のタイトルは近年の制作のテーマでもある「I Can’t Walk」です。今回は私が描き続けているスクリーントーンの作品を展示します。それとさらにそのシリーズを拡張したキャンバス作品を作ろうと 思っています。スクリーントーンは紙の上で使用するために作られたものですが、キャンバス上でスクリーントーンを駆使した新たなスタイルを見て頂きたいです。

Aki Yamamoto

1997年生まれ。グラフィティ文化の影響を通じて主にペインティング、グラフィックの分野で東京を拠点に活動している。近年は、漫画で使用されるスクリーントーンを使用した作品や3Dプリンターで製作した立体作品、〈BEAMS〉〈BUTTERGOODS〉〈GOODHOOD〉など国内外のブランドにグラフィックデザインを提供するなど、幅広いフィールドでの表現を追求している。近年の主な展覧会には「CYBER SPICE」(BEAMS-T - 東京、2024)、「見えない足、湾曲したあなた」(ワタリウム Light seed gallery - 東京、2022)、「ESCAPE TOESPACE」(IPMatter - 東京、2022)

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