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OBT

人間の感情や音楽、スケートボードからインスパイアされた感性。
OBTインタビュー。

Interview: Toshihito Hiroshima
Photo: Hidden Champion

1999年生まれの若手アーティストOBT。

ある日スケートボードにのめり込み、スケートカルチャーが持つDIY的でクリエイティブな側面に惹かれたことにより、自身でも創作活動を始めたという背景を持つ。

様々なアプローチを行い、VJまでもこなすアクティブな彼にバックグラウンドや展望を聞いた。



まず始めに簡単なバックグラウンドを教えてください。

1999年生まれで、18歳の時にスケートボードを始めて、その後地元の茨城県から東京に引っ越しました。もともと絵を描くことは好きだったんですけど、スケートボードを始めたことがきっかけで絵を描くことに対して気持ちが再燃したんです。その後20歳の時にドイツとオランダ、そしてフランスに行ったんですが、ドイツでは音楽のカルチャーから大きく影響を受けましたね。


エアブラシを使い始めたきっかけを教えてください。

エアブラシを使い始めた経緯は、元々ドローイングが面白くて好きだったのですが、いろんな人の作品を見て幻想的になるタッチを表現したいと思ったことがきっかけです。エアブラシは抽象的にも具象的にも描けるし、綺麗な表現が可能です。僕は様々なものをミックスするのが好きなので、まだ研究中ではあるものの今は自分の中でバランスをとりながら描いていますね。


どのようなモチーフを描いていますか?

以前は元々キャッチーな絵を描いていたのですが、徐々に描くスタイルが変わっていき、今のダークなものが内在するスタイルに変わりました。それは過去のバックグラウンドから影響を受けているんですが、その一つのきっかけが22歳のときに見た渋谷のシーンです。口では良いことを言っているけど目が笑ってない人がいて(笑)。僕は中学の時にサッカー部だったんですけど、なぜか急にハブられた経験があるんですよ。ずっとこんな性格だから誰とでも仲良くしていたら、次の日学校に行ったら急に誰も口を聞いてくれなくなったことがあって。長いこと一人でいる期間があったんです。それをきっかけに人の目を見るとその人がどう感じているのか、発している言葉と中身の感情のズレみたいなのがわかるようになっちゃって、それが今の作品にも影響してます。なので絵において主にフォーカスしてるのは心の部分ですね。見える部分と見えない部分を感じながら描いていたり、自分の感情をそこに出すような感じで作品を描いています。あとはスピリチュアル的要素だったり、ドイツで聴いたテクノやトランス、そしてそれらに繋がるグラフィックや色味からも影響を受けています。

影響を受けたアーティストはいますか?

最近の1番で言うとアーティストのGOMAさんに影響を受けました。彼はオーストラリア先住民アボリジニの世界的なディジュリドゥという楽器の奏者だったんだけど、ある日事故によって記憶がなくなってしまい、その後遺症で起こる気絶している最中に実際に見ている景色を描いているそうなんですけど、その絵を生で見たときは衝撃を受けました。あとは一番最初に影響を受けたのは俵谷哲典さんです。最近はtalktosubbie(@talktosubbie)という方の絵も好きですね。あと彫り師のれいくん(@rayfuruichi)は僕の左腕に彫ってくれた人なんですけど、その時の状況も相まって色んな意味で尊敬するアーティストです。


子供の頃から絵は描いていましたか?

5歳から6歳ぐらいの時、母の同級生の子供に絵が上手なお兄さんがいて、その人がナルトとか漫画のキャラクターを模写するのが上手だったんです。そこから自分も絵を描き始めるようになっって中高の時は教科書に落書きしたり、それも今につながっているような気がします。僕は昔からSFとか非現実的なものにかなり興味があって、あの世界観の表現は人間が思っている幻想をアウトプットするということだから面白いと思うんです。なので絵はスケボーと同じくらい自由で好きです。


スケートボードから受けた影響を教えてください。

スケートブランドのグラフィックからはかなり影響を受けたし、今でも頻繁にチェックしています。スケートは、ブランドによってバックボーンだったり、グラフィックのテイストが様々でそのブランドならではの色が出ていて面白いです。その中でも〈PALACE〉は好きなライダーがいることもあり、時折テクノやアシッド寄りなグラフィックを作っていて結構チェックしています。そして僕の精神的な部分はかなりスケーター気質なところがあると思います。いつも野良的な感覚を持っていたり、負けん気があったりとか。絵でも「見返すから待っておけよ」みたいなことを思ったりもします。何をやるにしても結局、メイクの瞬間が一番気持ち良いと思っていますね。メイクまでの過程が長いからこそ簡単には諦めません。だから何ごとにおいてもスケボーに置き換えて考えているところがありますね。ハートの部分はかなりスケボーから影響を受けています。

OBTのアトリエ。家の倉庫を改造して使っているという。


スケートボードに熱中していた時の話を教えてください。

もともと10年くらいサッカーに熱中していたんですが、部活を引退した18歳のときにスケートボードを始めました。水戸に「growth」というスケートショップがあってそこに通うようになり、みんなで水戸駅前などで滑って「めっちゃ楽しいじゃん」と思ってそこからハマっていった感じです。多い日は1日10時間とか平気で滑っていましたね。コロナ期間中は朝から立川に行ってパークで滑って、その後ストリートでローカルと朝4時ぐらいまで滑るみたいな生活をしていました。

スケーターの友達から感じたことは何かありますか?

スケーターからも様々な影響を受けましたね。スケーターの中にはモノ作りをしている人がたくさんいて刺激をもらいました。横浜で遊んでいた時期には、“NUTS”(@nuts_classic)というクルーの子たちと知り合い、一緒に試写会をやったりイベントをやったり。横浜のスケーターは一緒に滑っていて気持ち良い連中が多くて、様々なことを培えました。でも逆に東京のシーンは派閥がすごいと感じましたね。「俺らは俺らだから」みたいな。僕はそういうのが好きではなくて、どっちの会話もかっこいいんだから仲良くすればいいじゃんと思いましたね。


人との繋がりからも影響を受けているみたいですね。

そうですね。長い時間誰かといると負の部分が見えたりして、それに疲れることもあるんですが、でもそれが面白いところでもあると思います。みんな何かを思って生きているんだなと。楽しんでいるけど不満も同時に感じているということも感じますね。やはりみんな、それぞれが何か見たいものがあるから頑張っているんだと思っています。僕もそのうちの一人だけど、大切なことは理解して動いていきたいと思っています。

OBTさんの人柄を見ているといろんな人と仲が良いと感じます。

そうですね。僕は合わないと思った人とは一緒にいませんが、仲良くしてくれる子だったり、自分が好きな子とは一緒にいたいと思いますね。でも基本1人行動が多いので界隈関係なく様々なところに行くことが好きです。

地元のシーンについて教えてください。

茨城のシーンはここ2、3年の間に僕らの世代のクラブカルチャーがすごく盛り上がっていると思います。「コミューン」というお店や、まだ行ったことないですけど筑波にある「OctBaSS」というクラブも面白そうです。ローカルはみんなで一つだと思うので、どこでも関係なく誰でも集まってくるし、それも面白いところだと思います。スケートシーンも変わらず盛り上がっていると思います。

海外へ行かれた時の経験について教えてください。

海外も色んなとこに行ったことがあります。ドイツのベルリンやハンブルク、ケルン、あとオルデンブルクにも行きました。オランダはアムステルダムに行って、フランスはパリへ行きました。海外に行くとたまに差別を受けることもあるけど、素直にコミュニケーションをとってくれる感じがとても好きです。



VJも行なっていますが、始めたきっかけを教えてください。

VJは元々iPadを用いて絵を描いていたものを動かしてみようと思ったことがきっかけです。動かしたものをSNSに載せていたら、ちょうどその頃からよく遊ぶようになった光(@hkrnishi)って子がいる“SLATT PLAN”(@slattplan)というクリエイティブチームからイベントでVJを頼まれました。クラブのイベントで絵を展示したこともあるんですけど、やっぱりみんなクラブは踊りに来たり話に来たりする場所なので、作品がその人の目に届かないんですよね。だったら一番目立つところで動かした方が観る側も盛り上がると思いました。そういうのをいくつか重ねていったら、フィルマーのてっぺいくん(@wolrd_visuals)からWOMBで行われるイベントに呼ばれたり、アニメーションの仕事でニューバランスのスケートビデオに携わらせてもらえたりするようになりました。以前参加したイベントでは観客が口を開けてVJを観ていたのでこちらもテンションが上がりましたね。そういうのを結構楽しんでいます。


今後挑戦してみたいことはありますか?

今年はとある都合で茨城県に引っ越したということもあり、都内に簡単に行きにくくなるのはディスアドバンテージではあります。去年はイベントを主催するなど、来てくれた人に与えてもらった年だったと思っています。だから今年は人に与えられる年になれば良いなと思っています。応援したい子にペイントした洋服を送ったり、作品とかも友達やいい感性を持ってると思う人に送ったりとかしたいですね。あとは展示も去年に比べて質の濃い展示をやっていきたいですね。東京とは違う時間の使い方ができるので、絵を描くことに集中していきたいです。

最終的にOBTさんが描く絵は人柄を反映していると思いました。

僕は最終的に人が好きなんだろうなと思いますね。でもみんなそうだと思います。裏切られたくないし、見返りを求めたくなる時もあるけど、それなしでやる時もあるし、それも見方だと思いますね。過去の嫌な思い出も今となれば結構ありがたいと思えますね。僕は飽き性な性格なので、その性格を活かしていろいろなことをやっていたと思いますね。飽き性だけど絵を描くこと、そしてスケートをすることは飽きません。

OBT

1999年生まれ。18歳の頃にスケートボードに出会いストリートカルチャーにハマっていく中で幼少期から好きだった絵を描くことに再燃。二十歳の頃に訪れたドイツを主体としたにヨーロッパのカルチャーから自身の音楽や絵の感性に大きな影響を与え、欧州のテクノシーンから受けた色使いやタッチと日本独特の美徳と悪徳が混合した今の作品につながっている。そして22歳の時に本格的に作品の制作に力を入れることを決意し、展示やペイント、クラブイベントのVJとしてモーショングラフィックの制作も手掛ける。

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